第84話    「薄暮の釣」   平成17年11月13日  

9月末から11月初旬の釣で一番当り出るチャンスがあるのは、秋の陽が落ちて来る時間帯で、あたりが真暗になる直前である。昔の人は秋の陽はつるべ落としと云ったが、正にその通りであっという間もなく日が暮れてくる。その短い時間つまりまづめと云われる時間帯に魚のアタリが集中して来る事が極めて多い。

自分の秋の釣りのメインポイントのひとつは自宅から南側にあり、その釣り場までの距離が車で約10分位と比較的短時間で行ける場所にある。自分の釣り場は春、夏、秋の釣のシーズン一年を通して、夕方の34時の前後からの釣行となる事が多い。その為北、西、南のどのポイントいずれも車で約10分以内と決めている。そんな優雅な釣は車で何時間もかけて当地に来る釣り人達には、到底考えられないことかも知れない。そんな訳でその人たちが近くにいて釣っていて釣果がないときには、自分の魚をご苦労サンの意味を込めて差し上げたりもしている事がある。

自分にとって一日中何時間も陽に当たって釣る日中の釣は、疲れるだけの釣であるので滅多にしない。もっとも庄内の海では釣り方にもよるが、日中あまり釣れるが少ないのも事実である。その為県外や内陸からの釣り人は別にして地元の人たちの多くは、朝夕の釣に集中して釣り来ることが多い。そんな理由で釣の好きな人たちは出勤前とか退社後に釣行する人が、少なからず大勢居る事も庄内の釣の特性になっているのかも知れない。

程々の型を狙うのであれば、何も堤防の先まで重い荷物を背負いテクテクと30分もかけて歩く必要もない。そんな時間があったなら、自分の釣りのように魚を集める為にせっせと撒餌か撒餌兼用の軟らかい団子を数多く投入していた方が良いと思っている。最近ハマっているのが、薄暮の釣である。明るい時間帯にポイントを作るために数多くウキを使って団子を投入する。そんな時でもウキに反応がなかったにも拘らず、たまに柔らか団子を爆弾にして投入するとアタリが出る事がある。しかもウキで釣ると25~6cmの型だが、その上の33~38cmのものが釣れて来る。ちょいと短時間での遊びの釣では、引きが楽しめる釣りである。その上少し海が荒れてくれれば、湾内に入って来た40cmオーバーの黒鯛も釣れてくれる事もある。

陽が西の海に沈むといよいよ釣の本番となる。それまでのウキを止めてポイントに餌を投入する。団子が残っていれば、少し水を多く含ませてより柔らかくする。魚が寄って来ていれば必ず釣れる。しかもさっきまで釣れていた物よりも大きなものが・・・!

何も沖側の深い場所で釣れるものでもない。浅くともある程度餌が豊富な潮通しが良い場所であれば、まさかこんなところがと思われる場所でも魚は必ず寄って来ている。そんな場所を探すのも、又釣の楽しみのひとつである。